NIKE/ジョーダンとは違う「ストリートの戦い方」でヒットした『AND1』

Netflixドキュメンタリー『Untold: AND1旋風と夢の跡』は、ストリートボールを世界に広めた功績を持つバスケットシューズブランド「AND1」の隆盛を描いている。

2000年代、AND1が主催するバスケットボールイベント<AND1 MIXTAPE TOUR>が、プロバスケチーム「TEAM AND1」を率いて世界中を熱狂させた。このイベントは日本でも開催され、ファンたちを喜ばせてくれた。

そんなAND1は1993年に、Seth Berger(セス・バーガー)、Jay Coen Gilbert(ジェイ=コーエン・ギルバート)、Tom Austin(トム・オースティン)の3人によって創業された。彼らが最初に考えた製品は“トラッシュトーク(プレイ時に相手にかける挑発的な言葉)”を冠したTシャツだった。それまでトラッシュトークをデザインに組み込んだ製品はなく、もの珍しさからすぐに人気を博した。有名スポーツ系アパレルブランド「Foot Locker(フット・ロッカー)」からのオファーを皮切りにどんどん注文が入り、2年目には全米1,500店舗で取り扱われるように。また、有名テレビシリーズ「Friends(フレンズ)」や「The Fresh Prince of Bel-Air(ベルエアのフレッシュ・プリンス)」ではWill Smith(ウィル・スミス)が着用するなど、一躍注目のブランドとなった。

AND1が次に目指したのは10億ドル(1,500億円)規模の売上と、バスケブランド1位の座だ。ここを目指すために避けて通れなかったのがバスケブランドの巨人、「NIKE(ナイキ)」だ。
NIKEは“神様”Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)をはじめ、超有名選手らと契約して彼らの人気をうまくプロモーションに活用していた。そこでAND1も独自の魅力を持つ選手と契約することを決意。Allen Iverson(アレン・アイバーソン)、Kobe Bryant(コービー・ブライアント)らと同期の1996年ドラフトで全体4位指名を受けたStephon Marbury(ステフォン・マーブリー/後にオールスター2回出場)をブランドアイコンに選出。当時はまだルーキーとの契約自体、異例の出来事だったが、AND1は勝負をかけたのだ。そして運命の開幕戦。テレビCMを打ち、まもなく販売するシューズを身に纏ったマーブリーの活躍に期待……のはずがなんと足の怪我を負ってしまうという、痛すぎるスタートを切る事態に。

そこに送られてきたのが1本のビデオテープだった。写っていたのは一人の青年。ニューヨークのラッカーパークでプレイする、後に“Skip To My Lou”のニックネームで長く愛されたレイファー・アルストンだった。“Skip Video”と呼ばれたこのビデオが『AND1 MIXTAPE』の原点となり、シューズ事業のピンチを救う救世主となった。

無料配布されたこのビデオは、瞬く間に拡散されていき、ストリートの独創的なプレイに音楽をミックスした、新しいエンターテインメントは若者たちを熱狂させた。また、ストリートボールを全面に打ち出したことで、NIKEとは違うターゲット層にリーチ。金銭面を理由にNBA観戦に行くことのできない人たち、プレイヤー、ストリートボールファンにガッチリハマったのだ。

さらに、同時期にはNBAのロックアウトやジョーダンの引退なども追い風となった。そこから<AND1 MIXTAPE TOUR>も開催し、ド派手で個性豊かな選手たちを引き連れて全米を巡業。またバスケットボールにMC(実況)を加え、臨場感や興奮をさらに高める“エンターテインメント性”を追加して、AND1旋風を巻き起こした。

ゲームを変えたNIKEのCM ストリートボールを世界に広めた『AND1』の崩壊

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