盲目のスケーター、ダン・マンシーナ 人々に希望と可能性を示すトリックへの挑戦

「盲目であることについて、そして自分自身のことについて、日々発見をしているよ。僕はかつて目が見えていたころと同じ人間で、目が見えなくなった今でも、何かを心から愛することができるんだって。ただ、やり方を少し変えなくちゃいけなかった、ってだけなんだ」

盲目のスケーター、Dan Mancina(ダン・マンシーナ)は23歳から視覚を失い始め、現在ではほとんど目が見えない。網膜色素変性症という指定難病を抱え、病状が進行するにつれスケートはおろか日常生活の全てが困難になったという。そうして時間と共に不安や失意が押し寄せても、愛するスケートボードを諦めなかった彼は今や、障がい者スケートボードにおけるパイオニア的存在だ。先日、米テレビ局CNNがそんなダンを追ったドキュメンタリー映像を公開し、話題を呼んでいる。

徐々に視力を失い始め、信号がわからなくなると「車の運転を諦めた」というダン。都市や日本ほど交通機関が多くないアメリカで、車が運転できないことの不便さは計り知れない。仕方なく自転車に乗るようにしたが、それすらできなくなってしまう。自身の非力さに打ちひしがれ、以前のように思い通り行かなくなる苛立ちと共に、愛するスケートまで困難になると「自分の大事な部分がごっそり失われてしまったように感じた」という。

既にスケーターとしてのキャリアもあった彼にとって、視界を失うことは日常生活だけでなく、自分の人生まで奪われてしまう出来事だった。周囲からの扱いや会話まで変わってしまった、と語る彼の笑顔からは、当時のやるせなさがにじむ。

しかしダンがすごいのはただ絶望するのではなく、「盲目の自分とは、果たしてどういう人間なのか? そして何ができるのだろうか」と考えをシフトできたことなのだろう。自分を再発見する新たな旅を始める決意をしたのだ。こちらはスケート・メディア「BERRICS」が3年前に公開したドキュメンタリーだ。

「誰も盲目の人がやるとは思わないことをやろうと思って」とInstagramに様々なトリック動画を投稿し始めたダン。そのうち次第に、自作のベンチと長いステッキで、スケートボードのトリックにもチャレンジし始めた。彼にとって、愛するスケートボードほど、厳しい現実を突きつけられることもないだろう。しかし「『あ、これならできるかも』って思えたんだ」とわずかな手応えを頼りにチャレンジを重ね、数々のトリックを再獲得してゆく。それはまさに自分を再発見するような作業なのだろう。

飄々として見えるが、盲目のスケーター、ダン・マンシーニの歩む道程は決して簡単なものではないだろう。しかしそれは今や、多くの人々に希望と可能性を示す、開拓のスケート旅なのである。現在の彼は、ブラインド・スケートボードという未開の地を切り開いている最中だ。その功績によって、「REAL Skateboard」からシグネチャー・デッキまでリリースしているほど。視力に限らずハンディキャップを抱えた多くのアスリートやスポーツファンに、可能性を見せ続けているのがダン・マンシーニという男なのだ。

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