バルバドスが生んだ世界的スター リアーナ、「スーパーボウル」で圧巻のパフォーマンスを披露

アメリカン・フットボールの頂点を決める「スーパーボウル」。アメリカ最大のスポーツイベントと言っても良いほどの国民的行事なのだが、毎回試合内容と同じかそれ以上に注目を集めるのがハーフタイムショーだ。これまで超ビッグ・アーティストによる数々の名演が繰り広げられてきたが、2023年はヘッドライナーとしてRihanna（リアーナ）が登場。

今でこそキャリア、実力共に揺るぎない人気ポップアイコン、世界的スーパースターのリアーナだが、元は南カリブ諸島に浮かぶバルバドス出身。首都ブリッジタウンで生まれ、早くから歌の才能を発揮しており、バルバドスを訪れていた有名プロデューサー、Evan Rogers（エヴァン・ロジャーズ）に見出され16歳でデフジャムと契約。その後に渡米し、次第にチャートを席巻するようになったという、叩き上げのシンデレラとでもいうべきアーティストだ。決して裕福とは言えない出自から這い上がった、バルバドスが生んだ世界的スターなのである。

今回の「スーパーボウル」ハーフタイムショーに先駆けて公開された予告映像では、ある少女がブリッジタウンを練り歩く姿が描かれているのだが、サングラスをかけ、胸を張って自分の足で未来を切り開いてゆくような足取りが印象的だ。

リアーナことRobyn Rihanna Fentyも、少女時代にはこの小さな一方通行の道路「ウェストベリー・ニュー・ロード」を自転車で走っていたそうだ。彼女の実家のあるこの道は、スターとなった後の2017年にバルバドス政府が「Rhianna Drive（リアーナ・ドライブ）」と改名。映像でストリート・ネームの標式を見上げる少女と、バルバドスの未来が重なるようだ。

そう、今回のハーフタイムショーは、リアーナのキャリアにとって大きな意味を持つだけでなく、彼女の生まれ故郷であるバルバドスにスポットが当たるという意味で、非常に意義が大きい。帝国主義時代から植民地として翻弄され、奴隷として連れてこられたアフリカ系住民が多く住むバルバドスの歴史も、文化も、正確な場所でさえも、詳しく知るアメリカ人は多くないだろう。

しかし世界的、国民的なスターにだけ与えられる「スーパーボウル」ハーフタイムショーの大役は、ポップスの頂点にいる証であり、エンターテイメントの歴史に刻まれることとなる。これはリアーナのキャリアにとって重要なターニングポイントになることは間違いなく、それと同時にバルバドスという小さな国の存在を、アメリカ全土に知らしめるまたとない機会なのだ。

リアーナは、「随分遠くまで来たわけじゃない？ 私の故郷は今や本当に遠い。でもこの旅は、本当に素晴らしい旅でした。まさか自分がここまで来られるなんて夢にも思わなかった。だから今回はこの長い旅を祝うセレブレーションになるのです。心から楽しみにしています。故郷バルバドスをスーパーボウルのステージに上げることを、心から楽しみにしています」と語っていた。

“故郷に錦を飾る”というより、彼女の音楽の力で、小さな故郷を大国アメリカの真ん中に引っ張り上げるのだ。複雑ながら豊かな文化を持つカリブの小国バルバドスが、自分のルーツであることを決して忘れずにやってきたリアーナ。確かな夢と目標を胸に、努力を惜しまなければ、「スーパーボウル」の舞台に立つことだってできるということを身をもって証明してみせる彼女の存在は、故郷にとってもストラグルする世界中の若者にとっても、一つの希望だ。

2012年には貧困層の子供や若者を支援する基金「Believe Foundation」を地元に設立するなど、故郷に恩返しをしているが、今回のステージも大きな貢献となるはず。