クエイヴォ、急逝したテイクオフへの想いを込めた『Greatness』MVを公開

米人気ヒップホップアーティスト Quavo(クエイヴォ)が、ニューシングル「Greatness」のミュージック・ビデオを公開し、注目を集めている。

もともとこの楽曲は、クエイヴォの甥であり、ヒップホップユニット・Migos(ミーゴス)の仲間でもあるTakeoff(テイクオフ)が、昨年11月に急逝したことを受け、トリビュートソングとして作られた楽曲群の第2弾として位置づけられている。そのため、楽曲の随所にテイクオフへの想いが込められているのが特徴となっている。

なお、トリビュート第1弾として今年1月にリリースした前作「Without You」でもクエイヴォは、テイクオフに対する強い想いを綴っているが、前作がどちらかといえば彼へのリスペクト要素が強いのに対し、今回はテイクオフがクエイヴォにとって、家族であり、仲間でもあり、無二の親友的な存在であるという部分が軸となっている。たとえば、テイクオフにもう一度会えるのならば、自分が持っているすべてのものを差し出してもいい……というニュアンスが見られたり、MVの最後を「LONG LIVE TAKE」という、テロップで締めくくったりと、前作よりもより身近な人物の死を悼む、素朴な一個人としてのクエイヴォがより色濃く現れているように思う。

日本でも多くのメディアが報じたように、テイクオフは昨年11月1日、身内のお祝いのために訪れていたテキサス州ヒューストンのボウリング場で、サイコロゲームをしている最中に、肩や胸などに3発の銃弾を撃ち込まれるという、あまりに無残な形で射殺されることとなった。そもそもこの場がファミリーでの内輪イベントであったため、当然のごとく、クエイヴォも参加しており、ゲームの相手こそ、クエイヴォであったと報じたメディアもあった。テイクオフは、クエイヴォとその従兄弟にあたるミーゴスのOffset(オフセット)と共に育っており、その関係性は甥と叔父というよりは、兄弟のようなものであったと推測される。

そんな人物が、自分の目の前で、突如として思いもよらぬ形で殺害されるというショックは、想像するに余りあるものがある。それに第一、ミーゴスでのブレイクがなければ、当然、ソロアーティストとしてのクエイヴォの今の成功はないわけで、そうした意味でもテイクオフの死が、クエイヴォにもたらしたダメージは計り知れない。

実際、射殺される直前の10月7日にクエイヴォは、テイクオフとのコラボアルバム『Only Built For Infinity Links』をリリースしたばかりで、収録曲の「Hotel Lobby (Unc & Phew)」「Us vs. Them」「Big Stunna」「Nothing Changed」のいずれにも、テイクオフが参加し、クレジットされているが、このアルバムは批評家らのレビューも上々で、商業的にも大成功。早くも次回のコラボ作品に期待する声なども出始めた矢先に、テイクオフは惨殺され、もう二度と、新規のコラボ作品がリリースされることはなくなってしまったのだ。

そこからおよそ2カ月。沈黙を破ってクエイヴォが出したのが、前出の「Without You」であったというわけだが、リリースされたのがテイクオフとのコラボ作品ではなく、彼の追悼作品となってしまったというのは、なんとも涙を誘うところだ。今回の「Greatness」でクエイヴォは、テイクオフを欠いたミーゴスについて語っていると思しき箇所がある。その一節では、もうどうすることもできない「テイクオフの死」を、簡潔ながらも独特な寂寥感を帯びた言い回しで表現するとともに、オフセットと2人では、もうミーゴスとしての活動はないだろうというニュアンスを漂わせている。

もっとも、クエイヴォ&オフセットといえば、かねてより確執が取り沙汰されている2人。その内容も「オフセットがクエイヴォの元カノと寝ていた」だの「オフセット夫妻がクエイヴォ&テイクオフのSNSフォローを解除した」だのと、割としょうもないながらも地味に根深そうな話。しかも、クエイヴォとテイクオフは近年、積極的に共同プロジェクトを進める一方で、なぜかオフセットだけが蚊帳の外という状態が続いていた。

こうした点を考慮すれば、仮にテイクオフが亡くなっていなくても、ミーゴス自体は、残念ながらそう遠からず解散していた可能性が高い。しかし少なくともクエイヴォは、「テイクオフの死」というものが、同時に「ミーゴスの終わり」でもあると言いたげにも聞こえてくる(オフセットがどう捉えるのかはまた別の話)。無論、こうした点を抜きにしても、純粋に1つの楽曲として、この「Greatness」を楽しむことはできるだろう。それもまた、この楽曲が持つ魅力であり、意味でもあるように感じられるのだ。

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