ネッツの6thマンに成長 NBAキャリアの岐路で確立しつつある渡邊雄太

渡邊雄太が2Way契約(所属NBAチームとGリーグの下部チームを行き来する契約)でありながら、日本人2人目のNBA選手となった2018年から早4年。それからコツコツとキャリアを積み上げ、平均在籍期間4~5年というNBAで5年目を迎えている。世界最高レベルのNBAというリーグのなかで彼の存在感は着々と増してきている。

2021年4月18日にトロント・ラプターズと本契約を交わしたものの、翌シーズンの起用時間は伸びず再契約もなかった。今季開幕前にFAとなり、複数のチームからオファーがあるなかから最終的に選んだのがブルックリン・ネッツだった。

ネッツはリーグ屈指のスーパースターであるケビン・デュラント、カイリー・アービングの二人に加え、若手スターのベン・シモンズなどロスターだけ見れば、優勝候補レベルのチーム。ただ、そのネームバリューとは裏腹にシーズン前にはデュラントのトレード志願、開幕直後にHCスティーブ・ナッシュの解雇、カイリーのユダヤ人侮辱騒動、復帰明けシモンズの不調(すでにトレードの噂も)などなど、チーム力が疑問視される側面もある。

そんなネッツに欠けていた部分を、パズルのピースのようにピッタリと埋めているのが今季の渡邉である。

渡邉の最大の持ち味はなんといっても非常に献身的なディフェンスだ。その能力はジョージ・ワシントン大時代から評価されており、当時チームが所属していたA10カンファレンスで最優秀ディフェンス賞に輝いたことも。現在もベンチスタートながら相手エースの守備を任せられたり、2~5番のポジションを変幻自在に守ったりと、チームからの信頼は厚い。

11月5日(現地)に行われたシャーロット・ホーネッツとの試合後のインタビューでデュラントが「彼は毎回ハードにプレイしており、2倍も3倍もチームのために動いてくれる。ときには4~5番ポジションを担ってスモールラインナップを実現させ、ネッツの新たな側面を生み出している」とコメントしていることからも、頼りにされていることがわかる。

また、今季はオフェンス面での成長も著しい。11月1日に行われたシカゴ・ブルズとの試合後のインタビューで「デュラントやカイリーが相手を引き付けた時に、自分がノーマークのシュートを決めればいい。それがこのチームでの僕の役割」と話すように、ノーマークのシュートではあるが非常に正確に決めきっている。今季ここまでの3ポイント成功率はNBA全体3位(57.9%※11/5時点、自身初の規定到達)にランクインし、eFG%(1回のシュートでの得点期待値。NBA平均は53%前後)では75.7%と驚異的な数字を残している。これは本人が語るように自信を持って打てていること、オフェンスの際のポジション取りの良さが結果に出ているのだろう。

このように今まで所属したメンフィス・グリズリーズやトロント以上にチームにフィットしており、実質ネッツの6thマンに成長。ネッツにとってなくてはならないディフェンス力と、ノーマークであればほとんど決めてくる長距離のシュート力。これは渡邉が理想のプレイヤーとしてあげていた元ユタ・ジャズのジョー・イングルスなどの3&D(3Pとディフェンスに長けた選手)として開花してきているといえる。

残る課題はキャリアで65%程度のFTとシーズンフル稼働できるかという点だ。FTは現時点で10試合を終え0/2の0%と、シューターとしても、「NBAの本番」とも言われるプレイオフ戦線を考えても正直かなり厳しい数字だ。また、現在足の怪我を負ってしまうなど、ハードワークの代償として細かな怪我が増えていくと選手層の厚いNBAでは、出場時間が少しずつ確実に減っていく。どちらもNBAのフィジカルレベルにまだ順応できていないため、ファウルがもらえない、怪我が多くなってしまうという悪循環になっている。フィジカルレベルをもう一段階上げられれば、今後どこのチームにいっても重宝されるロールプレイヤーなら確実になれるはずだ。

とはいえ、過去最高のシーズンを送っている今シーズンの渡邉。デュラントやネッツの選手たちが認めているだけでなくネッツのオーナーであるジョー・ツァイからの支持も得たようだ(ツァイが「Where’s my Yuta highlights?/ボクのユータのハイライトはどこにあるのかな?」とツイートし、チームが動画を即SNSにアップした)。着実にNBAの中でも徐々に“Yuta Watanabe”というアイデンティティを確立しつつある渡邉。メンバー全員が揃えば、いつでもネッツはリーグ上位に絡める布陣であることは確か。そこに渡邉がいまのようにチームに貢献し続けられれば、ネッツの勝率も渡邉の評価もまだまだ上がり続けていくだろう。

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