ルーキー契約最終年 “ブラックサムライ”八村塁のサバイバルが始まった

八村塁といえば、日本人史上初めてNBAドラフトで1巡目指名(2019年全体9位指名)された日本バスケットボール界の“至宝”だ。しかし、その歴史的快挙から早3年。日本凱旋を果たしたばかりだが、今季がルーキー契約の最終年(4年目)で、実は彼にとって“勝負”の年となる。

現時点で同じ2019年ドラフト組の面々(ザイオン・ウィリアムソン、ジャ・モラント、ダリウス・ガーランドなど)が開幕前に巨大延長契約を続々と獲得した一方、八村の契約更改はまだ報じられていない。このままいくと、シーズン終了後には“制限付きFA”となる予定だ。そうなると今シーズン終了後に現在所属するワシントン・ウィザーズと再契約を結ぶか、他チームへの移籍かの2択が迫られる。そのとき、ウィザーズもしくは他チームから現在よりも高額のオファーが受けられるかどうかは、今シーズンの活躍次第ということになる。

現在の八村の評価は、ウィザーズおよびNBA内では未だ“ポテンシャルを秘めた若手”という枠から抜け出せてはいない。というのも、NBA入りしてから毎年地道な成長を続けていたが昨シーズンは東京五輪含めた過密スケジュールとプライベートを理由にした休養(開幕~2022年1月初旬まで)によって、チーム内序列は大きく下がったしまった。1・2年目は出場したすべての試合をスタメン起用されていたが、昨シーズンは最終13試合のみにとどまった。そして、今シーズンは同ポジションのカイル・クーズマやデニ・アブディヤに少し後れをとった形で、すべてベンチスタートになっている。

しかし、八村の能力自体はスタメンレベルであり、ちょっとした変化ですぐにチームの主力になれる。また、同チームのエース級、そしてオールスタークラスの選手になれる可能性も十分に秘めている。八村の長所といえばどこからでも得点が取れるオフェンス能力だ。これはゴンザガ大時代から非凡な才能を発揮している。最も得意なのが中距離のジャンプショットで、ワンドリブル、ターンアラウンド、フェイドアウェイなど多彩なフィニッシュパターンを持っている。また、持ち前の身体能力を生かしたゴール付近での強さも見せる。さらに昨シーズン大きくステップアップさせた3P(44.7%)は、NBAで100本以上シュートを放った選手のなかで全体2位と着実に武器は増えている。

そして、1on1のディフェンス能力も評価は高い。1~5番の全ポジションを守れる機動力と高さ、身体の強さを併せ持ち、2020-21シーズンには1on1ディフェンスの平均失点でNBA全体11位という数字も残している。

オフェンス・ディフェンスともに高い資質を兼ね備えているが、一方で課題をしいて挙げるとすればFTとチームディフェンス、そしてマインドセットだろう。まずはFTA(FT試投数)とFT%。FTAはキャリアを通じて1試合平均2本とスコアラーとしては物足りない数字。各チームのエース級は軒並み5本以上、リーグトップのヤニス・アデトクンボやルカ・ドンチッチなどは10本以上記録しているため、この本数を増やすべくまずは積極的にリングにアタックして得点チャンスを増やしたい。そしてFT%は昨季7割を切ってしまったため、7.5~8割以上の確率にしたいところだ。

続いてはチームディフェンス。HCやチーム関係者、NBAの記者らからはヘルプの塩梅やコミュニケーションが問題と指摘されることも。さきほど1on1のディフェンス能力はNBAでもトップクラスと述べたが、チームディフェンスとなるとポジション取りや先読み、声を出すなど身体能力以外の力が必要である。その点は試合数の少なさ(チーム帯同期間の短さ)が原因かもしれない。今季はチーム戦術を理解し、その点をどれだけ向上させられるかが課題だ。もともとバスケットIQは低くないので、経験さえ積めばすぐに順応できそうなポイントでもある。

そして、最後は“マインドセット”の部分。八村は良くも悪くもなんでもできてしまう選手。そのため、ハングリー精神をもっと持てばオールスタークラスの選手になれるはずだ。相手ミスマッチを積極的について効率よく得点を稼ぐ、ディフェンスでの競り合いの強さを誇示するなど、もっと強引なプレイをしてもいいはずだ。プレイの積極性はファウルの数に出るはずで、キャリア平均1試合/2個程度なため、もう少しファウルギリギリの攻めたプレイが見たいところだ。

現状では移籍の可能性が高いが(八村個人の問題というよりはWASのいびつなメンバー構成とエースのビールも含めた他選手の契約延長によるチームの“勝てていないのに空きがない”サラリーキャップ問題が大きい)、今シーズンも始まったばかり。11/10の対ダラス戦ではFG64.3%、3P50%、FTが3/3で100%、そしてチームトップの+20(出ている時間内の得失点)と、本領発揮してきている。残り約70試合でこの調子を維持し、シーズンフル出場ができれば、来季からの複数年契約が多くのチームからオファーされるだろう。

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