R.E.M.な世界を取り戻せ (永野)

R.E.M.を知ったのはU2目当てで買ったはずのポップ・ギアという雑誌の新作レビューだった気がします。でもあまりに昔の事なので違うかもしれません。
当時の自分はU2の影響でモノクロのジャケットのバンドは凄いという偏見で音楽を選択していました。それによって初めて買ったCDがザ・スミスの『ストレンジウェイズ、ヒア・ウイ・カム』という間違いも犯しました。もしモトリー・クルーの『ガールズ、ガールズ、ガールズ』がモノクロのジャケットだったら自分の人生はもっと楽しかったような気がします。

そんな事を言い出すと涙が出てくるので話を戻しますが、そこで見たR.E.M.の『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』もモノクロのジャケットで、これは買わなければと思いました。実際聴いてみるとその静けさの虜になり、ずっと聴きました。アメリカの文系ってこういう事なのかなと思いました。それは先程のザ・スミスも同じで、その時はイギリスの文系ってこういう事なのかなと思いましたが、ザ・スミスを聴いたおかげで自分は覇気がなくなりました。そんな事を言い出すと涙が出てくるので話を戻しますが、R.E.M.の世界観は浮遊感という事なのかもしれません。

浮遊感と言ってもマッシヴ・アタックを聴いた時に感じる浮遊感とは違って重くはなく、はっきりしてない事の心地良さと言えば良いのでしょうか。マイケル・スタイプの声、詩世界、そして演奏…曖昧な魅力に溢れています。一方で今の時代ははっきりした事を言う人がウケています。
彼らは一見シニカルなくせにわざわざインタビューは受けます。つまり彼らは自分の意見に共感を求めてるんです。かく言う自分もそうなんですけどねとは思いません。自分の意見なんて共感されなくて結構です。自分が今この文章でやり遂げたい事は告発です。いいですか?あいつらが意見する度その通りだと喜ぶ畜生どもが勝手に共感して、結果この世はシニカルな視点の奴らで一杯になります。そうなると逆にポジティブな奴らが重宝されますがポジティブな奴らなんて全員善人の皮を被った詐欺師で前向きな言葉を聞いて喜ぶあなたの顔を見て引っかかった引っかかったって笑ってるんです。
大体、シニカルもポジティブも関係なく自分が人様に何かの影響を与えられると思って発言してる人間の声なんて喘ぎ声と一緒ですよ。じゃあどうせなら喘いでみろ。あぁ〜んって。まだマシだろ。

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文・永野

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