ケビン・デュラント、NIKE「ブラック・ライブズ・マター」キャンペーンで人種差別問題を語る

スポーツアパレルを展開する多国籍企業の「NIKE（ナイキ）」は今でもブラックコミュニティに積極的に支援を続けている。最新の「Black Lives Matter（BLM＝ブラック・ライブズ・マター）」キャンペーンでは、9日にフェニックス・サンズへの電撃移籍を果たしたNBAのスーパースター、Kevin Durant（ケビン・デュラント）を起用。デュラント自ら体験を語ることで人種差別問題とその解決に焦点を当てた。

2020年5月にアメリカでアフリカ系アメリカ人が白人の警察官に首を圧迫され、死亡した事件をきっかけに全米に広がったBLM運動。スポーツ界では様々なムーブメントが始まり、NBAでも黒人差別へ対する抗議活動を支持する特別仕様のユニフォームを着用することで選手たちが抗議を示した。

BLM運動を支持する企業も少しずつ増え始めたが、NIKEは早くから人種差別に向けた政治的・社会的メッセージや活動を行ってきた。特に印象に残っているのは、2016年にNFLの試合前の国歌斉唱の際に膝をついて起立を拒否し、差別問題に抗議したColin Rand Kaepernick（コリン・キャパニック）。人気チームのクォーターバックだったキャパニックは、これをきっかけに翌年チームを自由契約になりNFLを去る結果となった。だが、多くの人たちが彼の勇気ある行動に同調し、BLMの象徴になった。そして2018年、NIKEは彼を広告塔に起用し大きな話題を呼んだ。

今回の広告では、先日まで在籍していたブルックリンで一日を過ごすデュラントが映し出され、BLMについて語り出す。「バスケットボールが僕に世界観を与えてくれた。朝起きると、コート上でもコートの外でもどうすれば自分が役に立てるのか考える。僕にとって“幸福”とは、自分を高めることに意識し、今を生きること。そしてコミュニティを支援するために、自分をさらけ出すことをためらわない。そのために『デュラント・ファミリー財団』がある」

デュラントは今ある自分も、そうやって様々な人々に支えられた力によるものと続ける。「バスケットボールを前進させ、社会を前進させていくことが僕の役割。黒人は常に無から有を生み出してきた。僕たちはずっと困難に立ち向かい続けてきたんだ。ここからは、そうではない世の中にできるはず」

NIKEは公式サイトで、今回の黒人歴史月間では“共同体としての幸福”を様々な形で追求していくことを大切にしたいと発信。同サイトでは、デュラントの偉大さについても書き込まれ、自分は「80億人のうちの1人」であることを語った彼の謙虚さについてこう付け加えた。

「ほとんどの人がそうであるように、公平な社会へ向けて前進させるために貢献するには、KD（デュラント）自らも精神的にも肉体的にも健康であり続けることを努力しなくてはならない」

2013年に「デュラント・ファミリー財団」を立ち上げて以来、デュラントは社会を前進させる手助けを第一に考えてきた。昨年12月にはメリーランド州で最も古い歴史的黒人大学であるボウイ州立大学に50万ドルを寄付すると約束している。デュラントの母親で財団のリーダーであるワンダ・デュラントは「私たちは、プリンスジョージズ郡を中心に、学生たちのより良い教育のために支援してまいります。ボウイ州立大学は、社会的に有意義な意味がある場所であると確信しています」と話す。NBAで未来の殿堂入りが確実視されるデュラントとNIKEによるBLMキャンペーンは、地域を起点としてポジティブな影響力を与えているようだ。