「どプロってヤツですね」 いま、憧れのスケーターは、一周回って堀米雄斗|西宮ジョシュア × 池田幸太 #2

日本を代表するスケーターの池田幸太をホストに据え、毎回縁ある人物をゲストに招き、トークセッションを繰り広げる企画。「Project2」のテーマである“Healthy Junk”の精神をもとに、毎回ゲストに潜む相対する中身、二面性にフィーチャーしていく。

西宮ジョシュアをゲストに迎え、パート1では彼の半生に迫ったが、今回は互いに共通した得意トリックについての話と、昨年末から今年の初頭にかけて渡米した際の、堀米雄斗との濃密な日々について話をしてくれた。

共通の得意とするトリック

池田幸太(以下 K):最近スケート調子はどう? 何かハマってるトリックとかある?

西宮ジョシュア(以下 J):Instagramにもあげたんですけど、B/Sキックフリップ(背中を進行方向へ向けて180度回転しながらボードに縦回転を加えるトリック)のスイッチテールマニュアルにハマってますね。

K:なんか最近やたらB/Sキックフリップ上手くない? 感覚がわかっちゃった?

J:そう、覚醒しちゃったんですよ! でも幸太さんB/Sキックフリップめちゃくちゃ上手いから、ちょっと言うの恥ずかしいんですけど、抜く時に進行方向が12時だとしたら、7時の方向、後ろに抜くとドライブ無しでキャッチできるのがわかって、これだ! みたいな。それで段差に乗ったらピタッときて、そこから得意トリックになりました。でも幸太さんはどうやってるんですか? すごい興味あるんですけど。

K:ジョシュアは抜く方向なら俺は多分真逆かな。とりあえずフリップをしっかりして、その後考えるみたいな感じ。俺はもうB/Sキックフリップは得意トリックとして散々やってきてるから、年齢を重ねてデモとかをあまりやらなくなってくると油断してやらなくなるというか、いつでもできるからいいかなってなるんだけど、最近デモとかやり出したら乗れなくて(笑)

それで、ヤバい…! これは歳なのか!? とかいろいろ考えたんだけど、もう一回しっかり練習しようって思ってやってたら思い出して、あっ、そうか。フリップだ! しっかりフリップすれば、後は身体が勝手についてくるんだなっていうのを感覚で思い出したんだよね。

池田幸太が感じた不思議な感覚

本人曰く不思議な感覚に襲われたと話すマレーシアでのVOLCOMのデモでメイクしたB/Sキックフリップ

J:そうなんですね。幸太さんでもできなくなる時があるなんて意外でした。俺、幸太さんが海外のデモでB/Sキックフリップやってる映像を見ましたけど、地獄でしたよ(笑)うわー、これだ! みたいな。アレには度肝を抜かされました。

K:それ、マレーシアだね。めちゃくちゃデカいバンクtoバンクでしょ!? 実際に行ったらBMX用みたいな感じのパークだったよ。でも、実はそこ2回行ってるんだよね。1回目は「VOLCOM」で行ってて、ルイ・ロペスとアレック・マジェラス、デイン・バーマンにヨーロッパのナシームっていうメンバーだったんだけど、皆アップもなしに最初からガンガン滑り始めて、いきなり会場のボルテージが最高潮に達して、とにかくすごい空気感だったんだよね。「世界のトップって半端ねえ」って思わされたと同時に、自分もすげぇ高まっちゃってさ。そこで俺もやんねえと! ってとりあえずB/Sキックフリップだけはやっとこうって感じでやったら、すぐにピタッときたんだよ。その一発がジョシュアの話してるやつだと思うよ。なんかそういう奇跡的な直感がハマったというか、不思議な感覚って、これからいっぱい経験することになるんじゃないかな。

J:その話めちゃくちゃ参考になります! それで2回目はどうだったんですか?

K:今度は何ヶ月後かにDCで行ったんだけど、オーディエンスが俺のことを覚えてくれてたんだよね。「お前この前VOLCOMで来てたよな!? またB/Sフリップ見せてくれよ!」って感じだったんだけど、2回目は全然決まらなくて……。最後の最後ギリギリで乗ってなんとか面目躍如って感じだったんだけど、その時の心境は地獄だったな(笑)映像ではバチバチに乗ってるんだけどね。

まあいい経験にはなったんだけど、どんな時でもどんな場所でもどんな状況でも魅せれる技を持っていて、さらに磨き上げてくっていうのは、プロスケーターには必要なんだなって思ったよ。

J:でもルイ・ロペスとか世界のトップがいる中、同じ立場で滑るのはスゴいと思いますよ。半端じゃないと思います。そういった姿を僕らの世代は見てきたので。

一周回った憧れのスケーター

高校生時代堀米雄斗(中央)らとじゃれ合う西宮ジョシュア(中央右)

K:ありがとう。じゃあ話はちょっと変わるんだけど、憧れのスケーターって誰かいる? これジョシュアには小さい頃からちょくちょく聞いてるんだけど、毎回返ってくる答えが違うからさ(笑)結構変わってるイメージあるんだよね。

J:確かに違ってたかもしれません(笑)でも今はそういったところを一周回って、ゴメちゃん(堀米雄斗)だね、結局。って感じなんですよね。なんでかって言うと、実は今年の一月まで数ヶ月LAにいて、一緒に動いてたんですよ。ちょうどオリンピックが終わった後のタイミングで渡米したから、彼は『Yuto Horigome’s “Spitfire” Part』の撮影真っ最中で、そこについていったって感じでした。その頃の撮影だとナケル・スミスとかも普通にいたので、すごく刺激的な日々でしたよ。

J:ただ雄斗はその期間、撮影でステアを跳びすぎて、いつも筋肉痛だって言ってたんですよ。それでも撮影になるとサクッとメイクしちゃうから、「うわ、スゲエ!」って感じだったんですけど、次のスポットに行ったら今度はハンドレールでハンマートリック乗っちゃうので、スゴいを通り越して「もう地獄だな……」って思いました。

でもさらにビックリしたのが、そうやって撮影終わって家に帰るじゃないですか、確か23時頃だったと思うんですけど、その後に「April(堀米雄斗のスポンサーのデッキブランド)のパークで滑るぞ!」って言うんですよ!? その時にどれだけストイックなの……って思わされましたね。かなりやばい映像残せてるのに、そこからプライベートパークに練習しに行っちゃうの!? って、こっちは半ば呆然ですよ。

実際俺もステアは苦手だから跳ぶんですけど、本気でめちゃくちゃ筋肉痛になるんですよね。だから雄斗の筋肉痛だよっていう気持ちもわかるんです。なのに練習しに行って、それを終えたら「明日は朝のスポットだから!」って6時に起きるみたいな。それを3~4日連続で繰り返すっていうのを普通にやってるから、あのパートは多分トータル1ヶ月半~2ヶ月くらいでできてると思います。それをアメリカの地で生で見せられたから、「やっぱりコイツすげえ……」ってなっちゃって。あれは相当食らいましたね。

K:マジで!? そんなペースで撮影してたの?

J:でもそれだけじゃないんです。雄斗は大会も出てるじゃないですか。だから大会の練習もしないといけないっていって、パートの撮影期間中でも練習しに行くし、撮影の日も合流する前にパークで滑って、調子を整えてからストリート行ってみたいな感じなんですよ。自分だったら撮影の日に1カット撮れただけでやったー! みたいな感じで一安心なんですけど、雄斗はそこで満足しないというか。

K:もう別次元の話だね。

J:一緒に3日間サンフランシスコ行った時もスゴかったですよ。『YUTO HORIGOME WEEKEND IN SAN FRANCISCO | RAW UNCUT』っていう動画も出てるんですけど、あれもパートにあるスイッチポップでギャップを跳んでダウンヒルっていうのを撮った後に、その上にあるキンクレールを攻めてるんですよ。ちょうどそれがパートの最初にあった鬼ゴケしてる映像なんです。そんな状況だから、身体は絶対にめちゃくちゃ痛いのに、今度は違うスポット攻めに行くんですよ!? それを目の前で見させられたから、「いや、俺はそんなに頑張れないよ……」って正直思っちゃって。これが一流なんだなっていうのを痛感させられたんです。それが一番好きなスケーターだって思わされた一番の理由ですね。

昔から変わらない堀米雄斗のスゴさ

K:いやー、それは誰でもそうなっちゃうよね。そんなすごい光景を目の前で見せられたらさ。いくら小さい頃に一緒にいた仲だとは言え。

J:昔から雄斗は人一倍練習する奴でしたけど、それが今も全く変わってないんだ!? みたいな。本当にスゴいなって。スケートボードっていろんなカルチャーとリンクしてるから、遊びもスケートカルチャーのひとつじゃないですけど、いろんなところにそういう誘惑があって、遊びを覚えて消えていっちゃうスケーターも過去にはいたじゃないですか。だけど、今や日本国民の大半に知られる存在になるほどの結果を残してるのに、そういうところにも全くブレずにやってるっていうのは、本気でスゴいなって思いますよね。

K:間違いないよね。ただ俺は最近彼の中ではそれが全部楽しいんじゃないのかな? って思うんだよね。身体は痛いけど……、またパーク行っちゃおうかな! みたいな感覚になれるのって、それがもう究極の遊びなんだろうなって思うんだよね。

J:確かにそういう視点で見れてないと、普通はあそこまでできないですよね。あと最後に俺がもうひとつ喰らったというか、自分も頑張らなきゃ! って思えたことがあって、雄斗はストリート撮影はご褒美って言うんですよ! 大会になると、練習とか例えメチャメチャつまらなくても頑張ってやらなきゃいけないから、ストリート撮影は何やっても自由な分、楽しくできるんだって言ってたんですよね。

K:なるほど。言われてみたら確かにそうだね。大会だとそれ用に新しい技を用意する必要もあるし、しかも一発で決めなきゃいけないからメイク率もあげる必要がある。しかも彼の場合は大手のスポンサーもついてるから、そういう意味でプレッシャーとかは半端じゃないんだろうね。だからストリートの撮影をそういう気持ちはスゴい理解できるよ。

でもジョシュアはアメリカで本当にめちゃくちゃ良い影響受けてきたね。結構この質問を受けると、あの辺のスケーター達は皆が堀米くんかな! ってなっちゃうよね。俺もきっと他からその質問がきたらそう答えると思うよ。実際に俺らみたいに生で彼のことを観てると、なおさら好きになるよね、凄さがわかるって言うかさ。やっぱりNo.1のOnly1だなって思うよ。確かに一周したね! それ聞いて本当にそう思った。

J:間違いないです。これがどプロってヤツですね。でも、なんというか友達としては昔と変わらず普通にホーミーみたいな感じなんですよ。でもそれを超えて好きなスケーターになったというか、なんか不思議な感覚なんです。

K:目の前にいる雄斗と、遠く離れたところにいる雄斗、2つの堀米雄斗がいるみたいな感じだね。すごく良い話じゃん! この話、本当にいろいろな人に知ってほしいよ。その努力を聞いたら、今の若い子達はもっと刺激を受けるんじゃないかな。

西宮ジョシュアがアメリカで経験した貴重な話はいかがだっただろうか。普段は見ることのできない金メダリスト・堀米雄斗の尋常じゃない努力に大いに刺激を受けた人も多いのではないかと思う。次回、パート3ではオリンピック後のスケートボードシーンの変化と、自身が思い描く今後について聞いていく。

スケートボードは何着ても良い、何をやっても良い。とにかく自由|西宮ジョシュア × 池田幸太 #1

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