暴力夜勤と厨二日記 隠キャなバットマンの「ゴッサム横断ウルトラ殺人クイズ」

日々、社会という名のゴッサムシティで孤独な戦いを続けている人はいるだろうか?

奇遇だな!俺もだ!いうなれば俺もお前もバットマンだ!
…という訳で、3月11日(金)『ザ・バットマン』が、遂に公開された!

ワーナー ブラザース 公式チャンネル/YouTube

気が付けばバットマンとしてデビュー2周年を迎えていたブルース・ウェイン。今日も今日とて暴力多めの夜回り先生として、地元ゴッサムシティの犯罪者相手に拳の説教を繰り出していた。

街の悪党もビビってる。協力してくれる警官も多少はいる。それなりにアンダーグラウンドでは多少の知名度を得てきたようだ。だが悲しいかな、世間一般には変質者扱い。
何より、街は一向に良くなる気配がないじゃないの!

どうにも弾けきれてない現状であったが、彼自身も思うところがあったのだろう。ポエム混じりの暴力ダイアリーを描くのが日課になりつつあった。

絶対に他人には見せられない内容だ。だが安心だ!俺に友達はいない!全然!

…というわけで愚直に暴力夜勤と日記活動を続けるバットマンであったが、なんとゴッサムの要人を標的とした動機不明の連続殺人が発生してしまう。
しかも現場には御丁寧にバットマン宛の手紙が残されているじゃないの。
ややこしいなあ!おい!という話であったが、いずれにせよ並の相手ではない。

出題者の名は、緑づくしのコーデな正体不明のリドラー。
おそらく自分以上にどうかしている奴だ!これを無視すれば名折れだ!と、リドラーの本指名を受けることにするバットマン。
もう日記なんて書いてる余裕はない!!

早速トンチと暴力をフル活用した24時間営業を開始!
たが、この連続殺人はキッカケに過ぎなかった。事件を追う内に、彼ですら知らなかった街が被る仮面と素顔に直面してしまう。
「俺の地元への想いは間違いだったのか?」と問われる事態に陥ってしまうブルース=バットマン。
果たして、彼は中断した日記を再開できるのか?
街を脅かすリドラーの『問い』に『答え』を出せるのか?
こうして、バットマンのゴッサム横断ウルトラ殺人クイズが幕を開けるのであった。

バットマンの明日はどっちだ!?となる本作。
あの手この手で毎回地元愛を試されているバットマンだが、本作でも地元ガチ勢っぷりがキラリと光っている。
とはいえ、デビュー2年目だ。
マントを翻してカッコよく登場はせず、普通に暗闇から徒歩で登場!
あまつさえ玄関をノック!
街の悪党にも「俺は復讐だ!」と微妙に気が利いてないセリフを発してボコボコにするなど、粗削りなジャスティスっぷりに目を見張ってしまうだろう。

更には友達が皆無なのも手伝ってか、帰宅後は誰にも見せるでもない日記を書き、BGMはニルヴァーナの『some thing in the way』という中二の役満ぶり。
おもわず「中学の頃の俺か!?」と言いたくなった。
いつも以上にバットマンの陰キャぶりが描かれている。
思えば『トワイライト』でも顔色の悪いヴァンパイアを演じたロバート・パティンソンだが、本作でも安定の顔色の悪さで2年目の若バットマンという役柄に説得力を持たせている。
おかげさまで口より先に手が出る!公務執行妨害上等!恐怖のバット煽り運転!など、陰キャとはいえ若さでブーストしたワンパクっぷりを披露!
そして終盤はコーチェラ・フェスのビヨンセばりにド派手に登場!!
『世を忍びながらも登場演出は凝ってる』というバットマンあるあるを、ここぞ!という時にブチかますのも見逃せない。
地元の小さなライブハウスで地道に演奏活動していた知る人ぞ知るバンドが、町民会の盆踊り大会でお披露目デビューを飾ったような展開とでもいおうか…。
決して明確ではないが、今後のバットマン自身への救いと成長を感じさせてくれるラストはグッとくる。

勿論、脇を固めるキャラも負けてはいない。
劇中でバットマンの犠牲者になるペンギンだが、ゴリゴリにカスタムされた車検ガン無視のバット煽り運転に、まさかの普通車で対抗!
後ろが絶賛大事故になってるにも拘らず、「おら!かかってこいや!」と煽り返す姿勢は実に痺れる。
劇中では小物扱いされていたが、修羅場で見せる気合は『疾風伝説 特攻の拓』レベルだ。
もはや別人じゃん!と言いたくなるビジュアルでコリン・ファレルがデニーロっぽい演技をしつつ愛嬌がある反社演技を見せてくれる。

『がんばれゴエモン』のえびす丸みたいなルックスのキャットウーマンだが、何せ演じるのがゾーイ・クラビッツだ。
スタイリッシュえびす丸っぷりで観客を魅了してくれる。
橋田寿賀子のドラマみたいな設定だが、渡る世間は鬼ばかり…だったら盗めばいじゃない!と言わんばかりのバイタリティには頭が下がる。
どこで覚えたんだ!?というキャット流格闘技、バットマンに対しての気まぐれな猫っぷり…と、ただの添え物で済まないキャラに仕上がっている。

本作のリドラーを演じるはポール・ダノ。
強火な推し(バットマン)への憧れが暴走し、殺人生配信からテロリズム・オフ会まで決行!
バットマンへの承認欲求でゴッサムを混乱のるつぼへ叩き込む。
なんだかんだで地元ラブなバットマンに対し、リドラーは地元へのヘイトをこじらせ!
どうにも返答に困る殺人クイズを劇中で次々と出題していくのだった。
SNSのフォロワーが500人っていうのも妙なリアルさがあるのだが、並の腕っぷしが強い奴より、全く話が通じない過激派オタクのがバットマンにとって強敵だ!というのが伺えるキャラクターだ。

3時間という長尺な作品、原作の小ネタが多くなりがちなアメコミ映画…そんな風に敬遠する人もいるかもしれん。
だが本作には、『分かっちゃいるけど辞められない映画』としての側面がある。
社会人2年目というとルーキーなのかベテランなのか…やる気もあるような、ないような…微妙な時期だ。
俺もかつてブラック企業で絶賛労働している時、周りからは「早く辞めればいいじゃない!」「消耗してんなよ!」「長生き出来ねえぞ!」なんて言われても返す言葉がなく、それでも手元に残ったコレをやるしかねえんだ!ていうか生活出来ねえんだ!この野郎!と半ば意固地になっていた。
とはいえ、周りの言うことも一理あるなあ…という気持ちがない訳でもない。
そんな風にモヤモヤしつつ14時間労働を終えて眠気マックスで家に帰る時、目にした朝日が妙に心にしみて「もう少し頑張ってみるか」と自らを鼓舞した切実さを本作を観て思い出した。

劇中のバットマン同様、形は違えど終わりのない戦いを挑んでる人も中にはいることだろう。
他人からしたら狂気の沙汰や酔狂、無駄に見えるかもしれん。
だが結果はどうあれ、その時に賭けた本人の気持ち自体は決して虚しいものではない。
本物だ!誰が何と言おうと!
少なくとも俺は認める!
職場、家庭、学校…俺には俺のゴッサムシティがある!という人。
そんな人にこそバットマンは寄り添ってくれる!と教えてくれる作品ですよ!

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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