アクセシビリティーが開く無限の可能性 テクノロジーで障がいと共生するApple『The Greatest』

「International Day of People with Disability(国際障害者デー)」(12月3日)を記念して、Apple(アップル)がショートフィルム『The Greatest』を公開した。

「我々Appleはアクセシビリティを人権だと考える」という企業理念のもと、開発してきたいくつものソフトウェアが無限の可能性を示す内容は、心温まるのと同時に改めて人間の可能性について考えさせてくれる内容だ。

音声コントロール機能は快適なモーニングルーティンを可能にし、例えば音楽トラックの制作などにも有効だ。モーションセンサー機能によって四肢を使用せずともデバイスやソフトのコントロールも可能になり、腕や指を使えない方がクリエイター活動をする道が開ける。iPhoneのカメラがとらえた画面内の情報を認識し読み上げる機能は、視覚機能の補助としても、あるいは生活や活動の記録にも使用できる。

フィーチャーされている音楽もユニークなのでぜひ注目してみてほしい。オーストラリアのアボリジニをルーツに持つアンサンブル(音楽集団)Spinifix Gumによる合唱曲「I Am the Greatest」は、“私は最強だ/それは生まれる前から自ら口にしていた”とポジティブな言葉遊びを全員で歌うチャントで“岩を怪我させたこともある”、“私の強さには薬が病気になったほど”、“雷を牢獄に送ったこともある”などのユーモラスな詩が続く。フィルムの出演者もこの歌を口にしながら、Appleのさまざまな新機能を伝えている。

実際Appleが実装している新機能は驚異的だ。アイデア次第で無限の可能性とインスピレーションを与えてくれる。ドアやドア上に書かれた文字を認識し、視覚障害者をアシストする「Door Detection」。四肢を使用せずに音声でiPhoneなどのデバイスの操作を可能にする「Voice Control」。すでにiPhoneなどに実装されている「AssistiveTouch」は、2022年にApple Watch向けのものが実現しており、Apple Watch搭載のジャイロスコープ、モーションセンサー、光学式心拍センサー、機械学習能力などがわずかな筋肉や腱の運動をも感知・分析することでユーザーはディスプレイやコントロールに触れることなくカーソル操作や電話に出たりといった操作が可能になる。正にAppleの最新技術によって可能になったアクセシビリティだ。

さらに「Sound Recognition」は赤ちゃんの鳴き声や、火災報知器、水が流れる音などを感知し通知する機能で、設定次第で育児や施設・設備の管理などもサポート、聴覚障害のあるユーザーの活動と安全性にも大きく貢献する機能。画面読み上げ機能「VoiceOver」には画像内の人物、オブジェクトの詳細を読み上げたりレシートの画像を表データのように認識する、といった新機能が追加されている。例えば人物写真ならば「赤いドレスで横を向いて微笑んでいる」というような詳細情報も認識し、報告できるため、視覚障害のあるユーザーにも、画像内の情報のさらなる探索と詳細認識を可能にした。「Background Sounds」は快適な背景音を設定することで、例えば聴覚や視覚が敏感なユーザー、つまり神経系の多様性にも対応できる可能性がある。

実際、このフィルムで提示されている使用法はまだまだ可能性のほんの一部。アイデア次第で、ユーザーが機能を組み合わせて使用したり、設定をカスタマイズすることで全く新しいハックを開発する余地がかなりあるだろう。それらが今後広まり、障害のあるユーザーだけでなく健常者ユーザーにもフィードバックされていくことも考えられ、ハックの多様化、アクセシビリティ広範化は障がい者/健常者のバウンダリーを次第に平たくすることにもつながるだろう。

もちろん、テクノロジーだけが人間を“Greatest(=偉大)”にしてくれるわけではない。逆境に負けず、胸を張って人生を過ごしていくには、少なからず勇気と努力が必要だ。だが、もしテクノロジーのサポートでその可能性が広がり、誰しもにチャンスがあるのなら、シンプルでポジティブなことはないだろう。Appleの「アクセシビリティは人権である」という理念は、とても明確かつ当然の価値観を提示している。そんな明確で当たり前なものこそ、文明の基礎と未来を司るべきである。

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