HIPHOPはリアルさが大事。どんな状況もドラマに変える|AK-69 × 木村ミノル

天守閣守る尾張の王者ことAK-69が、規格外の名古屋城超配信ライブをパッケージ化したDVD『LIVE:live from Nagoya』を1月27日にリリースする。
名門HIP HOPレーベル<Def Jam Recordings>から昨年リリースされた3rdアルバムとなる『LIVE : live』(ライブ:リブ)は、同郷・名古屋から注目の若手ラッパー¥ellow Bucksをフックアップ。さらにMC TYSON、SWAY、R-指定、IO、ZORN、Eric Bellinger、そしてもちろんDJ RYOWという超豪華な面々を客演ゲストに迎え、AK史上もっとも多彩な作品に仕上がっている。

今回は、格闘技界きってのHIP HOPヘッズとして知られる木村“フィリップ”ミノル氏に参加していただき、AKの真骨頂「LIVE」(ライブ)と、生きること「live」(リブ)をコンセプトに制作された『LIVE : live』について、そしてAK自身を掘り下げるべくインタビューを敢行。いま絶好調のファイター・木村ミノルと、キングでありながらシーンのトップを走り続けるヒップホップアーティストAK-69という、超貴重な組み合わせの対談が実現した。

AK-69 Official Channel/YouTube

ミノル:もう質問したいことだらけなんですが(笑)。格闘家を含めて、いまAKさんが注目しているアーティストやアスリートはいますか?

AK:これは対談だからとかじゃなくて、ミノルくんにはすごく注目してます。っていうのも、<Krush>のときからかなり期待されてて、完全に“押してる”感あったんですよ。でも一回、スランプじゃないけど負けが込んでた時あったじゃない?

ミノル:ありました、2年ぐらい。

AK:結構な期間だったよね。その葛藤とか色んな苦境を乗り越えて今があると思うと、さらなる伸びしろみたいものを、ファン目線で勝手に感じます。押しも押されぬ強さを持って出てきて、そのまま活躍し続けるよりも、人間としての儚さみたいなものも見せた上で戦っていく、その姿。この前のトーナメントとかも圧巻だったじゃないですか。

ミノル:ありがとうございます。ノリにノッてました(笑)。神様がずっと手伝ってくれてましたね、全く怖くなかったです。

AK:“ゾーン”に入ってた?

ミノル:あれは入りましたね。

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AK:それまでの苦労があるから、さらにああいった舞台が輝くというか。それはすごいありますね、うん。

ミノル:AKさんの中で、今までで一番挫折した瞬間ってありますか?

AK:挫折、あるよ。初めての挫折を味わったのはニューヨークに修行に行った時かな。

ミノル:それは、なぜ?

AK:日本ってちょっと変わってて、先進国なのに音楽だけガラパゴスみたいな“島”気質で、日本だけで成り立ってるんだ。で、その日本だけで成り立ってるモノは世界じゃ通用しないっていう、すげー不思議なマーケットなのよ。俺は海外に修行に出てる間、日本にいないじゃん。だから日本のことが“お留守”になってて。海外だったら、アメリカにいようとイギリスにいようとカナダにいようとインターナショナルな発信ができるんだけど、日本って日本にいないと、なんかもう活動が止まっちゃうんだ。日本には日本だけの動きがあるから。

ミノル:「あいつ今、日本にいない」っていうイメージになっちゃう?

AK:そうそう。「あの人どこ行った?」みたいな。

ミノル:なんとなくわかります。

AK:だから日本のことが止まっちゃうんだ。そのプレッシャーの中でアルバムを作らなきゃいけなかったし、アメリカに住むことによって世界でのチャンスみたいなことも意識する。そこに没頭すると失敗する確率も高いし、失敗した上に日本のこともおろそかになっちゃうから、どっちも手付かずみたいになって……みたいな。
そういうプレッシャーの中で自分を高めなきゃいけなかったんだよね。成功し始めた時だったから周りの人間模様とかも蠢いてたし、そういう部分でも精神的にやられたな。その時は初めて挫折じゃないけど、「なんかもう辞めちまいてぇ」みたいに思った瞬間があって、その後<Flying B>って自分たちの事務所を立ち上げた時が一番挫折しそうだったね。

ミノル:そうなんですか!?

AK:うん。まあ結果、俺と2人のマネージャーの3人だけで再起を賭けて武道館公演をやったんだけど。あれを実質3人でやったって、今でもなんかのギャグだったんじゃないかと思うよ。

ミノル:いやもう、本当ですね……。

AK:その時は本当に「もうダメかもしれん」って思った。その前にいたレーベルを出たのも、やっぱり俺が停滞期に入ってて。それでレーベルも「もう守りに入ろう」みたいな、あまり攻めたくなさそうな感じで。結果的に社長が「もうこれ以上の戦いはするつもりはない」って言ったから出たんだけど、出たところでさらなるステージに行けるって約束はされていないどころか、会社って後ろ盾を失くして自分で背負うことになるっていうね。もっとキツい戦いに出なきゃいけないっていう中で、うまくいかないこともたくさんあったよ。

ミノル:もう一度、イチからスタート切らないといけない感じですよね、気持ち的には。

AK:そうなんだよね。しかも勢いがウワーッてキてる時に独立だったらまだ良かったんだけど、ピークポイントを過ぎて「あれ?」ってなってる時に出たから、もう余計に「うまくいかない!」みたいな。本当にめげそうだったね、「ここまでか」と思って。

ミノル:それを抜け出すきっかけはどこで?

AK:もう本当に“やるしかなかった”から。そんな状況をもドラマに変えて、みんなに「再起を賭けて武道館行くぞ!」って伝えて。それで武道館を成功させることができたっていう。

ミノル:その姿を見ているからこそファンもついてくる、みたいなところもあるんですかね。

AK:そうだね。エンターテイメントである以上、格闘技でも試合前に乱闘騒ぎみたいのがあると視聴率が伸びるじゃない? みんな見たいからさ。あれって、すでにドラマが生まれてるからであって、それと一緒だと思うんだよね。
でも、成功するのが当たり前な人がライブをやるよりも、“もうダメかもしれない”っていう状況がドラマとしてみんなに伝わってて、「それでもAK、どうするんだ!?」みたいな、そういうところに注目が集まってエンターテインメントになる。でも、それが“フリ”じゃダメなんだよね。台本がないからこそ生まれるアートみたいな部分が、HIP HOPは特に大きいのかな。日本ではあまり大事にされないんだけど、俺はやっぱりHIP HOPはそういうリアルさが大事なんじゃないかなって、すごく思う。

ミノル:筋書きのないドラマみたいな感じですね。どうなるかわからないけど、最後はちゃんと良いエンディングで終わらせるっていう。

AK:そうだね。そのために努力するっていう感じかな。

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